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座右の銘は「自分に甘く。他人にも甘く」の藻の日常のアホネガティブログ。
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『ウサギ。』



 ふわふわした耳の毛がさっきからぴくぴくと震えて、私の浮腫んだ気持ちをさらに刺激した。真夏なのにピッチリした青い燕尾服はかなり暑いのではないだろうか。そんな心配をよそに、真っ白いウサギはすたすたと二本足で歩く。その首にかけられた黄金の懐中時計が真夏の日差しにチラチラと煌いている。
「ねぇ」
時計ウサギは応えない。ただ何かを目指して歩いている。意外な速さで。私は置いていかれそうになる歩調を少し速めた。
「ねぇ」
もう一度今度は強く呼び掛けてみる。時計ウサギはそれに歩を止めず、無感慨に振り返った。私は額に浮かぶ汗を拭い、制服のブラウスの襟を煽る。
「まだつかないの」
「未知の地に行くとき、ひとは誰でもその道程を長く感じるものです」
時計ウサギは云った。そして鼻とひげを数回ぴくぴく動かし、また無感慨に前を向いて歩き出した。私は溜め息をついて、汗でスカートが張り付く太ももを酷使し、空気も歪む住宅街のアスファルトを踏み出した。


『お悩みですか』
テスト終わりの高校の帰りに、そのウサギに呼び止められたのだ。
青の燕尾服、首には赤の蝶ネクタイ。大きさは私の背丈の半分くらいの、大きな白いウサギ。首には懐中時計。
『ならばわれわれの会議に参加してください。われわれは、悩んでいる人を探しております』



「ねぇ、まだつかないの。日射病で死んじまうよ」
「死にません。もう少しです」
「もう少しって、さっきから同じ事云ってる」
「うるさいですね。行く道が分からないんだから、知っている者に委ねればよいのです」
ウサギはいらいらしながらそう怒鳴った。

周りをゆっくりと過ぎて行く猛暑に霞んだ街は、見たことが無い。そしてもう二度と、見ることは無いだろう。


Fin.






タイトルはウナギではありません。ウサギです。
かなり前、大学受験のときに書いた覚えがある小説。(?)いや、ショートショートだなこりゃ。色々病んでて痛いな。ケケケ。

お目汚しでした。



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