座右の銘は「自分に甘く。他人にも甘く」の藻の日常のアホネガティブログ。
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【9月16日】
姿が見えないと思ったら、庭を歩いていたらしい。日差しがきついうちは一歩も外に出たがらなかったくせに、ここ数日涼しくなった所為かよく庭に出る。
片手に何かをこぼれんばかりに抱えて帰って来た。差し出された手の中を何気なく覗くと、そこには3匹のセミ。どうやら死んでいるらしい。
「夏の死骸」
ぽつりと呟くきみ。まるで誰かへの弔辞みたいだ。
寂しいね、と俺が応えると、きみはふっと懐かしむように笑う。
「夏は逝っちゃったのよ」
代わりに、後を追って秋が来る。
「じゃあ、お墓を作ってやらなくちゃ」
俺がそう云うと、きみは一瞬驚いたように顔を上げ、俺を見上げた。俺がでかすぎる所為なんだけれど、いつも俺を見上げるとき、彼女は首が痛そうだ。
じっと見上げてくる真っ黒い瞳。何だか猫みたいだなぁ、といつも思う。
暫く俺を不思議そうに見上げた後、彼女は俺の横をすり抜けて縁側の下のスコップを取り出した。庭の端に小走りに走っていき、穴を掘り始める。
でも、庭の土は小石がたくさん混じっていてうまく掘り返せないようだ。苦戦している彼女に走り寄って一緒に穴を掘る。
夏の墓穴。
数センチ空いた穴に、仲良くセミを3匹ならべて埋めた。
線香を一本ずつあげて、手を合わせる。鈴虫がリリリ…と泣いている。
「きっといい秋が来る。」
俺のその言葉に、きみが笑ったのが分かった。
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